文ちゃんの周りには、引きこもりやニートはもちろんのこと、相談事をする人がたくさんやってくる。
そんな人は、自分をどこかで変えたいとフツフツと思うようになるもんだ。(ワシだってそうだ)。そんな時に、文ちゃんはこう言うんだそうだ。
「自分を変えたい、自分の未来は自分でつくりたいと思ったら、普通は『一歩踏み出せ』っていうでしょ。
あれ僕はそれじゃ足らんと思うんですよ。一歩踏み出しただけなら、過去の自分とはまだつながってるんですよね。
まだ過去の自分とつながってるようじゃ、本当の自分の変化は期待できんじゃないですか。
だから本気で思ったら『2歩踏み出せ』なんですよね。」
講演会が終わり、サイン会も終わり、文ちゃんが「ちょっと煙草吸いたいな」と言うので、図書館の屋上庭園で一緒に一息ついた。
暗闇の中で、すぐ目の前に高層マンションが黙って建っている。講演前のネタ合わせの時にタカハシ英樹が「この前、あのマンションから女の子が飛び降りたんですよ。」とワシらに教えてくれた。
「文ちゃん、さっきまでこっちの場所では泣いて笑って喜びまくって帰っていった人がいるかと思うと、目の前では飛び降りる子がいるんよなぁ。」とワシが言うと文ちゃんは、難しい顔をしてうなずいていた。
しばらくの、沈黙。
煙草をうまそうに吸いながら、思い出したように文ちゃんが口をひらく。
「みむらさん、知ってます?
統計的に、タバコを吸う人にほとんど自殺する人がおらんのですって。」
知るかぁ。
さあ、ビールでも飲みに行くか、とワシらはゆっくりと腰を上げたのだった。
(おわり)
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